Project 03
環境・社会課題の解決に寄与する「ESG投資」とは
Project Member
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開発投資部 調査役
2009年入庫/法学部卒業
開発投資部のグローバル・オルタナティブ投資グループに所属。ファンドを通じた外部委託運用を担当している。
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総合企画部 調査役
2012年入庫/商学部卒業
総合企画部のSDGs推進室に所属。SDGsについての啓蒙活動などを担っている。
Project Story 01
環境・社会課題の解決に寄与する「ESG投資」とは
ESG投融資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資や融資のこと。企業経営の持続可能性を評価するという概念であり、持続可能な開発目標(SDGs)とあわせて世界で注目されている。日本においても、かつては投融資において、株主重視、利益重視、短いタームの中でどう利益を出すかという考え方が主流であったが、近年は、企業が中長期的に成長していくにはすべてのステークホルダーを意識する必要があるという考え方が広がっている。信金中央金庫では社内プロジェクトを立ち上げ、ESG投融資の目標設定と基準作りに乗り出した。
※ステークホルダー:株主、経営者、従業員、顧客、取引先、金融機関、行政機関、各種団体など、あらゆる利害関係者
Interview 01
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近年はもちろん、ESG経営という概念が広がる前から、信金中央金庫では環境や社会的意義を踏まえた投融資を行ってきました。グリーンボンドやソーシャルボンドと呼ばれる、環境に配慮したプロジェクトを資金使途に設定した債券や、社会課題を解決するインフラを作るための資金調達に使う債券に投資をするといった取組みです。たとえ収益面で大きなメリットがなくても、環境・社会的意義のあるプロジェクトであれば投融資を行うという判断は、これまでずっと続けてきたこと。それを今回、明確に目標設定、ルール化しようという動きが始まったわけです。
※グリーンボンド・ソーシャルボンド:環境課題(地球温暖化や再生可能エネルギーなど)や、社会課題(教育・福祉など)の解決に資する事業の資金を調達するために発行される債券。
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SDGsとESG投融資の関係性についてですが、SDGsは、環境課題や社会課題についての17の目標のこと。そして、その課題解決のためにESG投融資が用いられるということです。たとえば、金融機関などがESG投融資を行うことで、SDGsの一つの目標である気候変動への対策に寄与するといったことですね。つまり、SDGsが「目的」、ESG投融資が「手段」と言えます。
Project Story 02
3兆円の目標達成に向けて、独自の基準作りを遂行
2021年の7月、信金中央金庫では、2030年までのESG投融資の目標額を3兆円とする中長期計画を発表。2020年度の年間ESG投融資が約2,000億円であったことを考えると、向こう10年弱で3兆円という目標額は、かなりチャレンジングなものと言えるだろう。
そして、明確な目標を設定した後、必要となったのが、「信金中央金庫にとって、ESG投融資とは何か」という判断基準を作ることである。実は、どういった取引がESG投融資にあたるかについては、一定の基準があるわけではない。欧州ではある程度の基準が存在するものの、確定しているわけではなく、各国が世界の動向を見ながら模索している状況だ。そのような中で、社内の複数の部門に属するプロジェクトメンバーが連携して協議を重ね、信金中央金庫としてのESG投融資の基準を策定した。
Interview 02
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ESG投融資の基準を作る際に心がけたのは、欧州の動向を見ながら、将来的に日本でルールができた際でも不具合が起こらないように考えること。日本国内ではまだルールのない商品もあるので。欧州を参考に基準づくりを進め、日本の他企業にもヒアリングを重ねながら、具体的な基準作りを推進していきました。
債券の分野では、これがグリーンボンド、ソーシャルボンドという基準があり、それを審査する第三者機関もある。でも、ファンドの投資においては、投資信託に対して投資するという側面があるため、何がESG投融資に該当するのかという部分から議論が必要でした。たとえば、「ESG」という名前のついた投資信託が発売されていても、名前だけでは判断できません。その中身をしっかり見極めなければならない。そのために、信金中央金庫独自であり、かつ客観的に見てもおかしくない判断基準を作る必要があるわけです。そこが苦労した点でもあり、大きなやりがいを感じた部分でもありますね。
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基準が厳しければ、当然、投融資の目標金額の達成は難しくなります。ですが我々は、敢えてもともと厳しい欧州の基準を参考にしました。目先だけみれば、収益面では落ちるかもしれません。しかし、ESG投融資を行うことで、サスティナブルな考えを持った企業、つまり持続性を有する企業に投資するわけで、中長期的に見れば“投資する価値がある"という考え方をしています。
そもそも、信金中央金庫は母体が信用金庫であり、地域が存続しなければ私たちも存在できません。その危機感や問題意識が、ESG投融資を積極的に行う大きな原動力になっているのです。日本の99%の企業が中小企業であり、中小企業と取引をするのが信用金庫。その信用金庫を支える私たちには、間接的に日本を支えているという大義がある。自分の子どもや孫が日本にいてよかったと思えるような未来にするために、私たちにできることは、まだまだあると思っています。
Project Story 03
積極的な投融資を行いながら、常に進化し続けていく
信金中央金庫としてのESG投融資の目標額と基準が策定された今。次のフェーズは、その基準をもとに、どこにどのような投融資を行っていくかという具体的な計画作りだ。プロジェクトチームは、業務としては一旦バトンタッチした形だが、もちろんこれで終わりではない。世界のESG投融資の基準は今後も変わるものであり、信金中央金庫としての基準も時代に合わせて変えていく必要があるからだ。議論や試行錯誤を重ね、常に進化しながら、信金中央金庫として、ESG投融資を通した環境・社会課題の解決を実現していくことになるだろう。
Interview 03
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ESG投融資の基準は、信金中央金庫の評判や信用にかかわる重要なもの。今回のプロジェクトを通して、私自身、将来から「逆算」して先を読む力が鍛えられたと感じています。今後は、私の所属するチームでも、具体的にどのようにESG投融資を行っていくか、どういった設計の商品に融資すべきかを議論し、運用会社との意見交換なども行いながら、目標達成に向けて積極的に進めていこうと思っています。
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今回のプロジェクトは、信金中央金庫にとって初のことであり、私自身にとっても10年という長いスパンで物事を考え、基準を形にしたことは、価値ある経験でした。今後も、変化する状況の中で、議論や新たな基準作りに積極的に参画していきたいと思っています。
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学生時代に専門的に学んだことは、社会人になっても強い武器になると思います。そのためにも、皆さんには思う存分、悔いの残らないよう様々なことを吸収してもらいたいですね。
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信金中央金庫は、信用金庫のセントラルバンクとして唯一無二の存在であると同時に、約40兆円の投融資額を有する機関投資家でもあります。その特異性やポテンシャルに魅力を感じていただける方には、ぜひ一緒に挑戦し、良い変化を生み出してほしいです。
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